★AIJ問題で浮き彫りになった企業年金財政難と金融自由化影の部分★
AIJの問題は、国会議員の関心も高く、民主党の財務金融部門会議
でも金融庁、厚生労働省からヒアリングを行いました。今回のAIJ
問題の背後には、現在の日本が抱える深刻な課題が横たわっています。
ひとつは、企業年金の財政難の問題です。社会保障と税の一体改革で
は、公的年金の財源問題がクローズアップされていますが、企業年金
も事情はまったく同じです。大量採用した団塊世代が、続々と企業年
金受給者になっているので、企業はこれまでの積立金を取り崩すこと
になりますが、その積立額がすでに不足しています。不足額は企業が
穴埋めすることになります。しかし、現在の企業にそんな資金はあり
ません。いきおい積立金の運用利回りを上げて、当座の積立金不足を
しのごうとするのです。
AIJはそんな企業年金の弱みを巧みについて、高利回りの運用をう
たい文句に、中小企業の企業年金の運用を任されてきました。
もうひとつは、金融自由化の影の部分が浮かび上がってきたことです。
1990年代の日米金融協議で、米国は強く日本の金融自由化を迫り、
企業年金の運用規制の緩和と投資顧問の参入が行われました。
それまでの企業年金の資産運用は、たとえば株式や外国債券などへの
配分は30%以下に抑えるとの規制がありました。この規制は
1997年に廃止されました。投資顧問業の参入も同時期です。規制
緩和については利用者のメリットもあった一方で、今回のような事件
がおきると、その負の部分が際立ってきます。