現在アメリカでは、シェールガス開発によるエネルギー革命が進行 中であることは、多くの人々の知るところです。このシェールガス 開発の進展によっては、アメリカ社会だけでなく、世界の経済や安 全保障に大きな変化を生じる可能性があります。
シェールガスの特徴は、価格が安価であり、埋蔵量も豊富であるこ とです。シェールガスの生産により、現在、北米の天然ガス価格は 100万英国熱量単位(MMBTU:標準気圧下において1ボンドの水を 1℃上昇させるのに必要な熱量)あたり2・5ドルとなっています。
シェールガスの生産は2010年の統計で1億トン(LNG換算) ですが、今後2030年には2億5000万トンを突破して、 2035年には3億トンに達する見通しです。その結果、アメリカ が中東の原油に依存する割合が低下し、貿易赤字幅が縮小、中東に 対する軍事的なプレゼンスを低くすることも可能になり、米国の財 政赤字も縮小します。こうした動きは、現在のドル安を是正するこ ととなり、安価なエネルギーによって米国経済は回復し、その好影 響は世界に及ぶことが考えられます。
もちろん、アメリカのエネルギー革命の前途を手放しで楽観視する ことはできません。例えば、昨今のアメリカの干ばつの影響を受け て、ペンシルバニア州では、埋蔵天然ガスを水圧破砕して生産する ために必要不可欠な水の使用が禁止されることとなりました。
また、大手石油企業が、アメリカ国内のシェールガス開発業者に、 資本参加して、天然ガスの価格に影響力を行使しようとする動きも あります。一部の環境団体が、シェールガス生産に伴う環境破壊を 問題にしていることも気がかりです。
このようなマイナス要因があるものの、中長期的な視点に立つと、 現在北米を中心にして起こっているエネルギー革命は、時代のトレ ンドであり、これを逆戻りさせることはできないと考えられます。
日本もアメリカを中心にした世界の天然ガス選好の時代に合わせた エネルギー政策を検討すべきで、現在議論されている原発の問題を 考える際も、こうした視点が必要です。特に、日本のLNG輸入価 格は、アメリカの価格の6〜7倍ですから、北米の主要なLNG プロジェクトへの参加など輸入価格を低下させるための努力が必要 ですし、また日本の国内、特に世界で6番目の広さを有する日本の 領海・排他的経済水域での天然ガスを中心とした資源開発に取り組 むべきでしょう。
衆議院議員 海江田万里