ここ数年、「食」のあり方が見直されている。日本は、他の先進国に比べ自給率が低く、海外に頼らざるを得ない状況が懸念されているが、個人消費に関しては国内の生産でもまかなえるように感じる。世間を揺るがした「偽装」や「毒物」などの影響で、多くの人が体内に入るものへ恐怖心を持ち、どれが安心して食べられるものかと翻弄されているようだ。その様な背景もあり、「食育」というものが急速に広まり、関心が高まっている。
今回は、この食育と似通わせた、「馬育」のコバナシをお届けしよう。
この「馬育」という言葉は、私が食育に習ってつけたものであるが、これは現代社会において、重要な役割をもつだろう。以前、ホースセラピーという馬療法をご紹介したが、それに少し類似しているかもしれない。
本来なら、どの動物でもいいのだが、やはり馬好きとして、今回は馬でお話したいと思う。
この馬育は、特に、現役の競走馬よりは、引退した後の馬や、乗馬クラブにいる馬のことをさしている。
我々が、乗馬をしたり馬の世話をすることで、人間とは違う生命在るものの命の尊さを感じられる。馬と触れ合えば、ストレス社会の中での緊張感が緩和される。そして、お子様がいるご家庭には、子供が嫌う野菜の代表格「人参」を馬が美味しそうに食べることで、嫌いなものを克服する役目をもたらす場合がある。親、兄弟がいくら言っても聞かない子供でも、大好きな動物が食べているのを見ると、不思議と興味がわくもの。そこに、周囲の一声で、純粋な子供は「食べてみよう」と心変わりし始める傾向がある。
馬育、すなわち「馬を所有せよ」、というわけでなく、馬と触れ合う機会を持って、そこから得られる沢山のことを、今後に活かして欲しいと思っている。
馬の世話は、世話をしているようで、意外に、「されている」と言った方がいいのかもしれない。それほど、馬と触れ合い、命ある動物を大切にするということは、我々に精神の安らぎだけでなく、言葉に言い表せない、満たされた心の充足感も同時に与えてくれるだろう。
気候的にも、何をするにも気持ちの良い季節。沢山の楽しみを得られる馬育を、この秋、みなさんも始められてはいかがだろうか。
(2009.10.2)