先日、日経の朝刊に掲載されている興味深い記事を目にした。私が目にした記事と言うのは、文芸評論家の野口武彦氏の『江戸の風格―馬糞とアヤメ、新宿熱気』である。
日本の中心とも言える東京『新宿駅』。一日の平均乗車率(乗り換え等含む)が国内一で、JR・私鉄・地下鉄・バスなど、ありとあらゆる交通機関がほぼ一通り備わっているメガ・ターミナルだ。
普段何気なく通る『〜駅』。この『駅』という文字にも『馬』が用いられているのがわかる。今日『駅』は鉄道などの交通機関の『発着の場』を表しているが、元々これは、公用の『うまや』を意味とする言葉だったようだ。
記事の中に例として、俗謡の『四谷新宿馬糞の中であやめ咲くとはしおらしや』が挙げられていた。
想像して欲しい。
今でこそ交通機関が発達し、移動は電車や自動車だが、昔はその手段が馬だったのだ。
我々が電車で落とすのは傘や手袋といった類の小物といったところだろうか?しかし、馬は俗謡に謡われていたことでも分かるように『糞』と言う大物を落としていったのである。
愛馬家の我々にとって微笑ましく思える動作でも、当時、炎天下の中でその物の放つ臭いは、夏バテと言う言葉を通り越して、都会に住むものには気絶ものではないだろうか。(笑)
昔は『馬糞』、今は『排気(ガスなど)』と、いずれにせよ空気の美味しさに敏感になるのは、古今共に致し方の無いことである。
一人ひとりが、環境に対して些細な心遣いを持ち行動することにより、一層、心身共に潤いのある生活ができるのではないだろうか???と、ふと感じた朝だった。
(2007.1.19)