■コバヤシのコバナシ【金曜更新】

この音色、この想いが、あなたの心に届きますようにA

 モンゴル版の民話に登場する、フフー・ナムジルという青年には、非常に仲の良い一心同体のような馬が一頭いた。
 モンゴルの大草原を色々な所へ連れて行ってくれ、いつも一緒にいる、まさに自分の分身とも呼べる馬だった。

 だが、そんなフフーを妬み恨む女性が、ある晩、大事にしていたフフーの馬を殺してしまった。
 その、変わり果てた馬の姿にフフーは幾晩も涙を流し、悲しみに塞ぎ込んでいた。
 しかし、悲しんでばかりいても馬は喜んではくれないだろうと、フフーはある決断をした。
 それがモンゴルの民族楽器にもなっている『馬頭琴』作りである。

 悲しみに明け暮れた後、フフーは気持ちを切り替え、木で馬の頭の形を彫刻し、長い棹(サオ)に繋いだ。
 琴の要ともなる共鳴箱をその馬の皮で覆い、形を作る。弦は馬の尻尾で棹の上から下まで張り、弓も馬の尾で作った。
 そして、フフーは作った馬頭琴で馬のいななきや走り方を演奏した

 ここで私は何とも切ないフフーの馬への深い愛情と想いを感じた。
(2007.12.7)


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