今月は「馬と絵画」について書きます。私の趣味のひとつに「絵画鑑賞」があります。以前は自分でも絵筆をとっていたのですが、時間が無くなったというのは表向きの理由で、本当は自分の才能の限界を知り、今では世界の絵画を鑑賞することを楽しみにしています。
私は死ぬまでに世界の名画を100、実際にこの目で見て歩くことに決めて、自分で作ったリストを見ながら、海外旅行をしたときなどは必ず現地の美術館に行くことにしています。こうして国内外の絵画を見ていると、馬を題材に扱った絵画が、多いことに気が付きます。思いつくままに挙げるとフランスロマン派のジェリコーの描いた「エプソムの競馬」、イギリスのターナー、ドイツのデューラーなどの描いた馬の絵が有名です。東洋では中国の徐悲鴻の「奔馬」、日本では坂本繁二郎の「雨中馬」などもあります。
これらの画家ほど有名ではありませんが、「馬好きというより競馬好き、ロシア生まれで後にフランスに帰化した画家」といってすぐにテレスコビッチの名前が頭に浮かんだ人は、かなりの絵画通と言えるでしょう。
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【ちょこっとメモ】
コンスタンチン・テレスコビッチ
(1902〜1978)ロシア生まれ。アンチミスト(情愛の画家)として有名。柔らかいタッチと温かみのある色彩で描かれている。 |
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実は、私はテレスコビッチの描いた競馬の絵を持っています。といっても油絵ではなくてリトグラフ(石版画)です。テレスコビッチは1902年モスクワ郊外のメチェルスコエに生まれましたが、やがてロシアを襲ったボルシェビキ革命を嫌って1920年にパリに出て、当時、アンチミスト(情愛の画家)として有名だったボナールに私淑して、その作風を受け継いでいます。
競馬好きだった彼はパリのロンシャン競馬場によく足を運び、やがて自分で競走馬を購入し、その馬がレースで優勝する姿を一連の作品にしたのです。私が持っているリトグラフはその中の一枚です。テレスコビッチはまたスポーツ好きでもあり、1964年の東京オリンピックの時に来日しています。
つづく
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