日本ダービーを開催する競馬場は府中競馬場と決まっていますが、本場ロンドンのダービーが開かれる競馬場の名前は?そうですエプソム競馬場です。それではフランスのルーブル美術館に展示されているエプソム競馬場を描いた作家の名前は?
正解はテオドール・ジェリコー、19世紀の前半に活躍したフランス人の画家です。ジェリコーを有名にしたのはエプソム競馬場の絵ではなく、その3年前に描いた「メヂュース号の筏」という作品です。この絵も現在、ルーブル美術館に展示されていますが、フランスのフリゲート艦メヂュース号が座礁して、乗組み員のほとんどが漂流中に死亡するという悲惨な事故がありました。ジェリコーはその漂流の様子を描いてみせたところ、フランス画壇では、この作品をめぐって論争が起きました。ジェリコーはそんなフランス画壇に嫌気がさして作品を手にイギリスに渡り、そこで出会ったのがエプソム競馬です。
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【ちょこっとメモ】
テオドール・ジェリコー(1791〜1824)
北仏ルーアン生まれ。「馬」を題材にして描いた作品は疾走感や躍動の激しさを感じさせるものが多い。代表作は「メヂュース号の筏」が有名。 |
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ジェリコーの作品を見て気が付くのは、馬が空を飛んでいるような構図です。競馬ファンならすぐ分かるように、競走馬は障害競走の飛躍のときを除いて、トラックを駆けているときには必ず足が一本地に着いているはずです。実際の競馬の場面ではありえない馬のポーズですが、こうして宙を浮いているように描くことによって、競走馬のスピード感はさらに増しています。
もうひとつ、現在の競馬ファンがこの絵を見て、不思議に思うのは、騎手の騎乗の姿が直立しすぎていることです。馬の鞍に腰をしっかり下ろし、背筋をピンと立てているのです。現在の騎乗の仕方は俗に「モンキィー乗り」といって、腰を浮かして前傾姿勢になります。「ジェリコーは競馬をよく観察していないのでは?」と思う向きもあるかも知れませんが、当時の騎手の騎乗の仕方は、この絵に描かれているような乗り方が一般的だったそうです。
「馬に魅せられた画家・作家たち in the world」〜完〜 |