現代社会において、「自殺」というのは、今、特定の年齢層に限ったものではない。この国においても、年々自殺者は増加傾向にあり、非常に深刻な問題となっている。 世間に疲れ、自分にも疲れてしまった人。そして、年末に、この一年の疲れを軽くしたい人に、「風のダドゥ」という作品をご紹介したいと思う。 世の中には2つの命の種類があるという・・・。 「この世に誕生して良かった命。そして、もう一つは・・・生まれても無駄な命」 信じるものをなくし、孤独の渦に飲み込まれ、リストカット(自殺未遂)を繰り返す少女・歩美は、命に対して、そう考えていた。 ある時、死を選び、阿蘇山でリストカットを行い、そのまま意識を失った歩美。そこへ、装蹄師の桜田が彼女を発見し、「ふれあい広場」という牧場施設に連れて行く。そこで、一頭の馬、メイワジョニーと出会った。 歩美はジョニーと接することで、少しずつ、ほんの少しずつ・・・心を開いていく。 「人と馬と自然」の融合。ふれあい広場といわれるこの施設は、明日へ生きる希望を無くした者達が集い、年齢も様々だ。 人と馬が互いに認め合い信頼し、寄り添う姿。共に馬の世話をすることで、癒され、無くしたそれぞれの「何か」を見つけ出していく。 何より、阿蘇の広大な自然の豊さには、ため息が出るほど素晴らしく、心に響くものがある。 それは作品を観た我々にも通じ、「癒し」を得られると、私は思う。 共に忙しくなるこの季節。少し手を休めて90分程、馬と自然に癒されてみてはいかがだろう。 (2008.12.12)