三月も残すところ、あと十日程となり、早くも一年の1/4が過ぎ去ろうとしている。関東では、連日二十度を超える日が続き、ようやく春本番といったところだろうか。季節も穏やかさを取り戻し、様々な行楽地への予定もあるだろう。 そんな予定のある方や、そうでない方にも楽しめる本を一冊、ご紹介しよう。 「ナルニア国物語/馬と少年(第5章)」である。 ウォルト・ディズニー制作で、映画では、第2章の「カスピアン王子の角笛」までが上映された。 こちらの作品にも馬が登場しており、その颯爽と走る姿は非常に優雅で果敢な印象をうけたのを覚えている。 さて、この第5章の「馬と少年(英:the horse and his boy)」だが、今まではナルニア国がメインだったが、こちらではナルニア国の近隣国アーケン国の少年(王子)が主人公、そして同行する馬を中心に描かれている。 物語を通して感じるのは、地球上で日常に起こりうるあらゆる可能性がこの一冊に凝縮されているということだ。例えば、人と馬(動物)の共存・権力争い・貧富の差から生じるいくつもの乗り越えなければならない試練など、主人公の少年と馬、そして共に旅をする少女と馬、これら二人と二頭のキャラクター設定も、作品を通してみると、非常にうまくできている。 何より、表題にもあるように、「馬」が中心で物語を引っ張っているのが、我々には興味深く、物語に入っていき易い。 意識的に物事を考えながら行動することは、日常においては当然大切な習慣として身に付けておきたい。そして、ふと生活の中で出会う、こういった作品などで気づく教訓なども、しっかりと心に留めておきたいものである。 子供達の未来にはさらなる可能性があるが、それは決して平坦な道のりではないことを教えてくれる。ただ、その厳しくも思える状況にどう立ち向かっていけばいいのか、何を大切にすればいいのか。その答えも、しっかりと描かれている作品だ。 子供や、大人の心に温かく響く一冊。この連休に、春の陽のもと、読まれてはいかがだろう。 (2009.3.20)