春の陽気な日差しも心和やかに、穏やかな季節(とき)の流れを感じる今日この頃。先日の大雨で、少し乾き始めていた草花達も、再び潤いを取り戻し、生き生きとしているようだ。 さて、今回はタイトルにもあるように、以前から少し気になっていた「馬の坂」についてコバナシをしたいと思う。 正確には「馬坂(うまざか)」と呼ぶこの坂。全国でこの「馬坂」という名をもつ坂はいくつかあるそうだ。今回調べるに当たり気付いたのだが、私の地元からほど近いところにも、その「馬坂」はあった。 場所は、世田谷区岡本。詳しくは「岡本」と「瀬田」の町境にある。比較的閑静な住宅街で、都心へのアクセスが便利であるのに加え、都内ではあまり想像できない畑や緑溢れる大きな公園など、自然環境にも優れた地域として人気を得ている。 そんな場所に位置する馬坂。 大きさとしては一般の車2台が少し余裕をもって、互いに行き来できる広さと、わき道の歩道といったところだろうか。 ただ、地元民を始め、通ったことのある人はお分かりだと思うが、世田谷・杉並はタクシーの運転手も嫌がるほど複雑な迷路のような道設計になっており、この馬坂も例外ではない。道幅には余裕があるものの、その勾配加減や湾曲は、どこか山車道を思わせるところがある。 武家屋敷(元岡本藩の池田家筆頭家老を代々勤め上げた伊木家の表門)など、歴史的建造物がこの馬坂の周辺各所にあるのが、新たなファンを生み出す。 当初は道幅も、さほど今より広くはなかったが、後に「馬でも通れるように」と、その幅を広げたそうだ。 その時代の「馬」が時代を経て現代の車へと、歴史と文明の発達が地域に残した足跡、それが「馬坂」なのである。みなさんが普段歩くその坂も、その昔、馬が歩いた「馬坂」かもしれない。 (2009.4.17)