6月に入り、2009年上半期、最後の月を迎えた。年が明けたと、新たな気持ちで迎えた2009年。 あっという間に半年が過ぎたことに、なんとも月日の経つ早さを感じずにはいられない。 私のような物を書く人間が使用する、紙にまつわる馬のコバナシを皆さんにお届けしようと思う。 パソコンが主流になっている現代。しかし、作家が書物を書き上げる際に必要なものがある。それは「原稿用紙」である。名を残した数多くの作家達は、自身の想いを原稿用紙に込めて、書き上げていた。 そこには、作家独特の書体や書き方がある。「字はその人物を物語る」と言うが、手書きの原稿は、出版され同一化された書籍とは別の、もう一つのオリジナルの作品と言えるだろう。 和半紙が主流だった原稿用紙を、明治時代中期に尾崎紅葉の助言で洋紙として売り出したのがきっかけで、その作家の魂を書き込める紙として、昔から夏目漱石や、石川啄木など多くの文豪達に愛されていた原稿用紙がある。それが1659年に東京・神楽坂で創業した、和紙問屋として有名な「相馬屋」の原稿用紙である。 多くの文豪達は、この相馬屋の原稿で作品を書き上げることが一種のステータスのように感じていたのではないだろうか。この原稿用紙で書いてこそ、書き続けられてこそ、一流の証。 作品の読み手一人ひとりの、良い作品に出会った感謝の気持ちが、作家へと反映され、その度合いが「相馬屋の原稿用紙で書く」ことに繋がる。つまりこの相馬屋の原稿用紙が、読み手と書き手を繋げるものになっているのだろう。 人の温もりを文字にのせ、後世に書き残すことのできる原稿用紙には、無機質なパソコンにはない、文豪達の誇りとロマンが宿っている気がする。 (2009.6.5)