九州各地で降り注いだ記録的な豪雨は、少しずつその範囲を広めている。お隣中国地方の山口県では、一瞬にして冠水となり、住民達は避難する暇もなく、膝丈前後程の雨水などが溜まり、困難な生活を余儀なくされている。そんな中、土砂崩れの起こっているゴルフ場でゴルフを楽しんでいる方がニュースに映っていたが、土砂のすぐ横でスイング・・・、何とも怖いもの知らずな光景であった。くれぐれも、こと今年は二重、三重に用心が必要である。 さて今回は、梅雨明け間近?な、石垣島にまつわる馬のコバナシをお届けしよう。 タイトルにある「赤馬節」は、別名「いらさにしゃ〜」というこの島の方言で、「あ〜嬉しい!!」と、心の底から湧き上がる喜びで、地に足がつかない状態、非常に心が満たされ喜びを感じている心境の時に使われるそうだ。 その昔、大城師番(おおしろ しばん)という宮良村の役人がいた。赤馬節とは、この師番がある日、帰宅途中に一頭の赤毛の馬に出会い、作詞作曲したものである。 帰路の途中、一頭の赤毛の仔馬に出会った師番。周囲を見渡したところ、主らしき人物はおらず、師番が歩くと、その馬も後からついてくる・・・といった行動が少し続いた。近寄って頭を撫でてやると、たいそう馬は喜び、彼は家へ連れて帰った。一生懸命愛情を注ぎ、その馬は大型で気品高い名馬アカンマー(赤毛の馬)になった。 その優れた資質をもっていることが、首里の琉球王府、尚貞王の耳にも届き、役人が師番の元へ、その馬を御料馬にするようやってきた。国王の命令に背くことはできるはずもなく、連れて行かれたアカンマー。師番も、愛情を存分に注いだ馬との別れは悲しくてしょうがなかったが、「それほどまでの名馬に育て上げたことは名誉なこと」と言い聞かせ、門出の宴をし、見送った。 しかし、王の前に着いた馬は、王が想像していた馬とは全く違う行動を見せた。王は「替え玉を送った!」と怒り心頭で、師番を呼びつけた。師番も嘘ではないと引かない。「それならこの暴れ馬を乗ってみよ!」と王に言われ、師番が乗ると、馬は非常に優雅に、また凛々しく颯爽と走りだした。 自分のした行動(=主と引き離したこと)に気付いた王は、「この馬を乗りこなせるのはお前しかいない。そして、こんな素晴らしい馬だ、しっかりと可愛がるように。また、役職も上げ、『高徳』の扁額を授けよう」との命を言い渡された。また一緒に暮らせるという喜びを胸に、双方は、師番の家へと戻っていった。 これはまだ序章に過ぎない。この他に話はいくつかあるが、それはまたの機会に。昔から、人間と馬が共存し、そして信頼し合える関係を築いたというのが何より素晴らしい。 (2010.7.16)