ある時、叔父はいつまでも馬を手放そうとしないウルゲンに対し「本当にあの馬が好きなら、別れの歌を書いてもらい、自由にしてやれ。そうすれば歌の中であの馬は永遠に生きる。」と諭す。 その言葉で馬に対して多少の踏ん切りはつき始めたものの、ウルゲン自身が町で生活をすると言う事は彼にとって考えにくかった。 馬頭琴のコバナシでは「琴」として、いつまでも大切にその馬を想っていたが、今回の作品では「歌」にして永遠に愛馬が生き続けるものとしている。 全体を通してこの作品には『モンゴル民族の誇り・家族の愛や絆・友情』が溢れている。それは心の奥底にまでゆっくりと深く、じんわり染み入るものだった。 また、ウルゲンが例え話をする時に『馬を用いた表現』をするところはとても面白い。 ディスコで踊っている若者を見て「まるで馬がたて髪を振っているみたいだ」と言う。遊牧民ならではの発言で、思わずニヤッとしてしまう。 何もかもが揃う時代。そんな時代だからこそ、今一度「生きることの喜び」をしっかりと感じ取り、本当に大切なものをそれぞれ見つけ出して欲しいと思う。 (2008.1.18)