■ 不安定要素が多い中国経済だが潜在的成長力は無視できない。■
■ 環境、金融等の分野で連携しともに経済発展を図るべき ■
☆順調に回復する中国経済。中国国民の自信の源に☆
上海万博で注目されている中国ですが、5月の連休に5ヶ月ぶりに
訪中してきましたので、最新の中国経済事情について報告します。
中国経済は2008年にはリーマンショックの直撃を受け、輸出に
急激なブレーキがかかり、その結果、倒産する国内企業が続出する
など深刻な状態でしたが、現在ではその傷跡もほとんどなく、順調
な回復を見せています。
むしろ、リーマンショック後の世界経済の
立ち直りに中国経済が大きな役割を果たしているとの自信が、そこ
かしこで感じられます。
2009年の名目GDPは日本の5兆1260億ドルに対して中国
は4兆9090億ドル(総理府試算)と、わずかばかり日本に遅れ
をとりましたが、2010年のGDPが日本を抜いて世界第3位に
なるのはほぼ確実視されています。
輸出総額は、すでに2009年には1・2兆ドルでドイツを抜い
て世界第1位になっており、貿易総額も2・2兆ドルに達して、
アメリカについで世界第2位です。また、貿易を通じて蓄えられた
外貨準備額は2009年12月で2兆3992億ドルとなり、世界
第1位です。これらの数字が背景にあり、中国国民に自信を与えて
いるのでしょう。
中国経済は、リーマンショック以前の2007年秋に上海の株価も
最高値を付けいわゆるバブル経済に陥っていました。そこで政府も
2007年後半からは金融を引き締め、経済過熱防止、インフレの
抑制に努めていたところのリーマンショックによる企業倒産、失業
者の大量発生ですから、政府はこれまでの経済政策を180度転換
して経済拡大策を講じることとなりました。
政府が定めた経済政策
は2年間で4兆元(約57兆円)の財政支出、金融緩和策などで、
2009年には成長率8%維持、失業率4・6%以内を目標にしま
した。
日本は景気の急激な悪化に対する個人消費拡大策としてエコポイン
トが効果をあげましたが、中国では自動車や家電製品を、特に農村
部の住民が購入する場合に、大幅な割引支援が行われました。
また、
失業防止策ということでは相変わらず多くの従業員を抱えている国
営企業に対する補助金を支給するなどの施策も講じています。
いずれにしろ、政府のこうした政策の効果で、2009年の第1四
半期のGDP成長率は6・2%だったのが、第4四半期には
10・7%を記録しました。
その結果2009年通年では8・7%
の成長で、8%の目標を達成することができました。2009年の
中国経済は、他に類を見ないいわゆる「V字回復」が行われたのです。
輸出は2009年を通じて、前年比マイナス15・9%と大幅な減
少になっていますが、2010年に入って、世界経済の立ち直りと
ともに、回復の傾向にあります。
☆持続的な発展のために解決すべき事項も山積☆
こうした動きを前に、中国政府は2010年も「積極的な財政政策」
と「適度に緩和された金融政策」の方針で進むことを先の全国人民
代表大会で決議しています。世界経済はまだリーマンショックから
完全に立ち直ってはいないとの判断で、引き続き政府主導の投資を
行っていくことを明らかにしています。
金融政策でも引き締めを実
施して「出口」を考えるのは時期尚早との立場を公にしています。
先日発表になった2010年の第1四半期のGDPは前年同期比
11・9%の増加となっています。
しかし、中国経済の持続的な発展には、公共投資中心の政府主導か
ら、民間消費拡大などによる民需主導へ成長戦略を転換する必要が
あります。同時に、現在の中国では沿海部VS内陸部、都市部VS
農村部の経済格差が大きくなっています。
また相変わらず零細経営
でインフラ未整備の農業の立ち遅れや農村の社会保障制度の欠如な
ど、人口の8割を占める農村部の問題を解決しなければ中国全体の
発展はないことは明らかです。
環境破壊の対策も待ったなしです。私が北京にいた3日間はスモッ
グがひどく、青空はほとんど望めませんでした。
現在、北京市では
出勤時間に時差を設けたり、クルマのナンバープレートによる進入
制限を行っていますが、それでも出勤、退勤時の自動車ラッシュは
ものすごく、排気ガスによる大気汚染も深刻です。
もうひとつ早急に解決しなければならない問題が、公務員の汚職や
幹部の腐敗です。
2008年に汚職事件で裁判にかけられ被告人と
なった公務員の数は約3万4000人で、民衆の不満は、地方での
集団抗議事件となり、その件数の把握は困難ですが、放置しておく
と、いつ大きな暴動になるか分かりません。
★ リーマンショック以降は「日本に学ぼう」という姿勢 ★
こうした不安定要素をはらんだ経済発展ですが、大きな市場を国内
に持つ中国の潜在的な成長力は日本経済の成長にとっても無視でき
ません。
リーマンショック以前の中国はアメリカに学ぼうとの姿勢が濃厚で
したが、リーマンショック以降は、アメリカ型の市場万能経済では
だめだという声が広がり、再び、日本に対する注目が高まっていま
す。
特に、環境・省エネ技術や、アメリカ型とは異なる日本の金融
システム、全国民に行きわたっている社会保障制度などについて、
「日本に学ぼう」との姿勢が明らかになっています。これらの分野
での協力関係を通じて両国の経済発展を図ることが大切です。少子
高齢化で活力をなくしているわが国にとって、成長力を秘めた中国
の発展は不可欠なものになっています。
衆議院議員 海江田万里 |