◆鳩山総理が約束した普天間移設問題解決のタイムリミットまで、余すところ数日となりました。鳩山総理自身が5月末解決の中味について説明した
@連立与党間の合意
A受け入れ先の合意
Bアメリカの合意
の3つのうち、何とか「大筋合意」が得られたのは、Bのアメリカの合意のみで月末を迎えそうな雲行きです。
そのアメリカとの合意も、ふたを開ければ普天間基地の移転先はキャンプシュワブのある辺野古周辺で、時計の針が、政権交代前に戻ってしまった感がします。こうなると沖縄県民の怒りにも道理があると思われますが、今回の普天間問題での不首尾を鳩山総理一人に負わせるのは、不公平ではないでしょうか。
◆鳩山総理が沖縄問題に早くから関心を持っていて、沖縄県民の負担を少しでも減らしたいとの思いを持っていたことは、古くからの民主党の議員たちはよく知っています。まだ小沢氏の自由党と合流する前のオリジナル民主党が結成された直後の党大会を、当時の鳩山代表の強い意向で、沖縄県那覇市で開催したほどです。
昨年夏の総選挙の際、沖縄を遊説した鳩山代表が「できるなら海外、最低でも県外」と発言したのは、選挙前のリップサービスではなく、鳩山代表の積年の思いからです。
しかし、問題は、その思いを実現させるための環境整備と下準備が決定的に不足していたことにあります。環境整備の面を考えると、東アジアでは先日の北朝鮮潜水艇の韓国哨戒艦に対する魚雷攻撃に代表される北朝鮮の核やミサイル問題があります。また最近急激に海軍力を拡大している中国の存在もあります。
これらの課題に対する解決策が見出せるまでは、沖縄の海兵隊のもつ抑止力は日本の平和と安全にとって必要です。
◆政権交代後、鳩山総理が普天間の沖縄海兵隊の問題について、それまでの発言を翻す機会はあったと思います。それは昨年末に、インド洋での海上自衛隊の給油活動を中止することを決定したタイミングです。この時点では沖縄の名護の市長も普天間基地からの航空部隊の受け入れを容認する市長でした。
ここで「インド洋は撤退するが、同時に普天間の問題で、これまでの合意を覆すと日米関係が持たない。普天間基地の県外移転問題はもう少し先になる。申し訳ないが許してくれ」と沖縄を訪問して素直に話をすべきでした。このチャンスを逸してしまったのは、当時、鳩山内閣の支持率が高く、その自信が、「政権交代したのだから何でもできる」との過信につながってしまったのではないかと思います。
もちろん、私自身も鳩山総理とは何度も話し合う場があったわけですから、その際に、はっきりとそうしたことを進言しなかった責任はあります。
◆1月に入って名護市長選挙の結果が出てから、鳩山総理の思いと、普天間移転問題の現実の動きは徐々に乖離(かいり)するようになりました。また、内閣の閣僚間の意見の不一致も目立つようになりました。全閣僚が一致して、鳩山総理の思いを少しでも実現しようと懸命に努力している姿を国民に見せることができず、逆に迷走のイメージが広がり、鳩山総理は一人で風車に向かうドン・キホーテのように映ってしまいました。
この上は、日米地位協定の問題や、米軍の訓練先を沖縄県外に少しでも移せるよう、内閣と民主党を挙げて取り組む姿勢を見せることが大切です。
5月28日に予定されている鳩山総理の会見は、「5月末で沖縄問題は失敗に終わった」と懺悔するのではなく、これからの展望を示すことが必要です。11月にはオバマ大統領の訪日が予定されていますから、このタイミングで日本の考えをアメリカにはっきり主張して、今年50周年を迎える日米安保に対する共同宣言を出すように努力するべきです。
(2010年5月26日 記)
衆議院議員 海江田万里 |