★ 経済界「視点」『桂林荘雑詩』に寄せて★
私の好きな漢詩に『桂林荘雑詩』がある。
休道他郷多苦辛
同袍有友自相親
柴扉暁出霜如雪
君汲川流我拾薪
読み下し文にすると
「道(い)うを休(や)めよ
他郷(たきょう)苦辛(くしん)多しと
同袍(どうほう)友有り 自ずから相親しむ
柴扉(さいひ)暁に出(いず)れば霜 雪の如し
君は川流(せんりゅう)を汲め 我は薪を拾わん」
この詩は、江戸時代後期の日本人が作った漢詩の傑作のひとつである。
作者は広瀬淡窓(たんそう)、もちろん淡窓は号で名は建。豊後の国
日田の出身で郷里の日田に桂林荘という名の私塾を作り、人材を養成
した。この桂林荘に集まり幕末、維新に活躍した人材には、高野長英
や大村益次郎などが挙げられる。
私も何年か前に日田を旅行した折に、桂林荘(その後、名前を咸宜園
に変えた)の跡地を訪問した。今でも当時の塾の一部は残っており、
地元の方が親切に桂林荘の教育方針などの説明をしてくれた。
詩の大意は、
「(桂林荘に集まった若者は)郷里を遠く離れて他郷に来ているが、
弱音を吐くな。同じ綿入れを着た仲間がいるじゃないか。
今日も寒い朝だが、さあ朝飯の支度をしよう。お前は川へ行って水を
汲んで来い。私はかまどにくべる薪を拾ってくる」
私は今の日本は、各人が、それぞれの持ち場で力を出し合う『桂林荘
精神』が必要だと思っている。民主党も自民党もない。「誰かが総理
をやっている間は協力できない」などと愚痴や文句を言わずに、
東日本大震災、そして原子力事故という未曾有の国難を前にして、
同じ日本人として協力し合うことが必要だとつくづく思う。
それができない理由のひとつは、現在の日本の国民の多くが『桂林荘
雑誌』のような日本人の団結を訴える詩に触れ合うことがないからで
はないだろうか。私は特に子どもの頃からこうした詩に触れておくこ
とが大切だと思っている。
私がこの桂林荘の詩を初めて知ったのは、中学生の頃だった。もちろ
ん、学校の漢文の時間などでは教えてくれない。父親の書棚の中にあ
った『和漢朗詠集』という本の中にこの詩があったのだ。子ども心に
勇気が湧き上がってくる詩だと感じた記憶がある。
桂林荘の詩は、私の父親世代は学校の漢文の時間などに決まって暗誦
させられたと聞いたことがある。しかし、そうした歴史の故か、私た
ちの学校教育の中でこの詩は排除されてしまった。
国難の時代の今こそ、日本人の先達が作った漢詩の名作を学校教育な
どで学ぶべきではないだろうか。
衆議院議員 海江田万里
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